[BOOK] モモ

出張のとき、ANAの機内誌に載っていたミヒャエル・エンデの記事を読んで、共感するところ、心に響く言葉があったので、この「モモ」を読んでみた。
小学校高学年向けの児童書なのだが、大人でも読みがいのあるボリューム。そして、今の日本に生きる大人だからこそ読むべき作品とも思えた。

ミヒャエル・エンデのことを知らない人にてっとり早く伝えるなら、映画「ネバーエンディングストーリー」の原作、「はてしない物語」の作者である。

ドイツ人のエンデは、イタリアに移住してそこでモモを書いた。

不思議な力を持ったモモは親のいない浮浪児。しかし、周囲の牧歌的に暮らす人たちと楽しく共存していた。
ところがその周囲の大人たちは将来のために時間を貯蓄しましょうという灰色の男たちに騙されて時間を盗まれる。せっせと時間を節約しては、それがどんどん盗まれていく。子供たちの面倒を見る(教育をする)ことも取り上げられ、心は荒んでいく。
モモは時を司るホラと亀のカシオペアと共に灰色の男たちに立ち向かう、というお話。

貧しくも豊かな心をもった暮らしをしていた人たちに対して「君たちは時間を無駄にしている。将来のために時間を貯蓄しておけば、後で使うことができる。利息だって付く」といって、人々を効率よく忙しく働かせるように仕向ける。人々は物質社会で豊かになるが心は荒む。
そのありさまが、まるで今の年金制度、度重なる増税の言い訳、ブラック企業の合法化みたいな日本の政治経済を彷彿させる。親学的政策の「子供の家」も出てきて、政府(決まり)が子供たちを教育する。

モモの親友、道路掃除夫のベッポはモモにこう言う。

「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。(中略)…そこでせかせかと働き出す。どんどんスピードを上げていく…(中略)…もっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息が切れて、動けなくなってしまう。」

納期に追われ、効率よくアクセクして仕事をして、その仕事に満足することも無いまま納めるという自分の仕事にも突き刺さることばである。
そして続ける。

「つぎの一歩のことだけ。つぎのひと呼吸の事だけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。(中略)するとたのしくなってくる。これがだいじなんだな、たのしければ仕事がうまくはかどる。」

納期に追われず、少しずつ丁寧にやり、満足した時点できれいに納めることができたなら、仕事が辛くなることも無くなるだろうか。

冒頭のANAの機内誌で引用されていたのが、ホラの言葉である。時間泥棒に時間を盗まれないようにできないのとかとモモに問われてできないと答えた言葉。

「人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならないからだよ。だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない。」

その通りだと思ったが、自分ははたして時間を守れているだろうか。

灰色の男たちのふかす葉巻の煙に毒された時間が人間に流れ込み続けると、人間は病気になるという。その病気が、何もやる気が無くなってしまい、不満が募る。そのうちそういう感情も無くなって心が空っぽになってなってしまうという。まさに鬱病ではないか。病名は致死的退屈症というらしいけども。

児童書なのでサクッと読める。アベノミクスで気分だけは新富裕層な人にもお勧めの作品である。