[OPNION] 辺野古で起きている異常事態について

普天間基地の移転先として、地元の強い反対を力で抑えつける形で進められる辺野古基地建設。
その反対運動の最中で事件は起きた。
これは、ちょっとそこらの事件とは違う。

「辺野古移設反対派を米軍拘束 刑特法違反容疑で県警逮捕(2015/2/23 朝日新聞)」

山城議長が基地提供エリアに意図的に侵入したかどうかは別にして考察してみる。
ここでは刑法に触れる不法行為があったと仮定して論じてみる。
そうすることで、この異常事態が沖縄以外では起こりえない特殊なものだとわかる。

まず、司法警察職員(警官など)ではない私人でも、現行犯ならば被疑者を逮捕することができる。
私人逮捕の場合、直ちに警察を呼んで引き渡す義務がある。
その義務を怠ると、刑法220条で定められている逮捕監禁罪という犯罪になる。
これが日本の法律。

例えば、自宅に泥棒が入って、現行犯で捕まえたとしよう。
警察に通報せずに泥棒を長時間拘束して場所移動の自由を奪ったとしよう。
逃げ出さないように拘禁したりしよう。
これは、逮捕監禁罪という犯罪行為になってしまう。
たとえ、対象者が犯罪者であってもだ。

さて、辺野古のゲート前で米軍の警備員に私人逮捕された人の場合はどうだろうか。

現場には多数の警察官がいた。
その場で米軍の警備員がその人を逮捕し、基地内に引きずり込んでいった。
その後は米兵がいる場所で拘禁された。つまり、米軍に拘束された。
米軍警備員の立場は微妙だが、日本人なので私人と仮定しよう。

警備員が拘束(逮捕)したのは午前9時ごろだ。
その、およそ3時間後頃にやっと日本の警察に引き渡された。

警備員なのか米軍なのか知らないが、明らかに私人による逮捕権の範疇を逸脱している。
その場にいた警察に直ちに引き渡さないといけないのに、警察が入れない基地内に引きずり込んで3時間も拘束している。
これは、逮捕監禁罪に問われてもおかしくないはず。

しかし、おかしなことに、現場にいた警察官たちは私人による逮捕を目の前にして、被疑者の引き渡しを求めずに見てるだけであった。
警察官がその場で警備員に被疑者を引き渡せと要求し、身柄を受け取れば、ありふれた軽微な不法行為で済んだろうが、そのまま放置したことで、米軍警備員による逮捕監禁罪が警察官の目の前で発生してしまった可能性が高い。
公務員による告発の義務か、警察官ならば目の前で起きている犯罪行為を放置することで、また何かの法にふれているかもしれない。

ここで、もう一つ事態を複雑にするのが日米地位協定である。

日米地位協定によって、米軍や米兵には特権が与えられていて、それは日本国民のそれよりも上である。
これまで、米兵による凶悪犯罪が何度も発生したが、軍事裁判では、かなり高い確率で軽微な刑で処分されてきた。
米軍警備員による私人逮捕が逮捕監禁罪に問えないとしよう。問えないから日本の警察も見てるしかなかったとしよう。
基地の外では犯罪だが、基地の中で米軍が行うことは日本の法律が及ばないとしよう。

米軍は日本において、最強最凶の集団となりえる。
じゃまな日本人がいれば、基地内に引きずり込んで痛めつければ日本は何もできないということになる。

日本国民として、日本でそんな馬鹿なことが通用するのを認めても良いか?
いや、そうではないだろう。
これが日米地位協定。沖縄で米軍基地が嫌われる理由として、実は最大のものである。

安倍総理は、日本国民の幸福の追求の権利が侵されるときは、自衛権の発動をするといったが、沖縄県民が基地を拒絶するのはヘイトスピーチでもイデオロギーでもなく、「安心して平和に暮らしたい」だけなのだ。

中国軍が攻めてくる?
それでも幸福の追求の権利を侵されるだろう。でも、それは発生してもいない仮定の話だ。
ところが米軍基地問題は、今現在、沖縄県民の幸福追求の権利を多かれ少なかれ、阻害している。
アメリカ人が嫌いというヘイト問題でもない。個人個人ではアメリカ人と住民は仲良く付き合っている。
むしろ、沖縄県民はアメリカ人は好きなほうだ。

日本政府が雇用した米軍専属の警備員が日米地位協定の適用を受けるかは疑問だが、その警備員を使って米軍が違法行為をしたなら外交問題だろう。内政干渉でもある。
海外での邦人保護を訴えた安倍総理だが、国内ですら守れないのでは情けない。
ここは、アメリカ政府に抗議の一つでもしておくべきじゃないだろうか。

ところが、残念ながら日本政府はアメリカへ抗議するどころか、アメリカに配慮しつつ反対派住民を弾圧する方向へ舵を切っているように見える。
沖縄県警は、県の機関とはいえ、幹部の多くは国家公務員であることや、指揮命令権は国が持つことから、実際には警察庁の配下だ。中央政府には逆らえない。
海上保安庁などは言うまでもなく。

近年では珍しく、中央政府によって市民への強い圧力が下部組織へ命じられれば、末端の若い警官・保安官は、そんな経験もなく、それほど賢いわけではないので、法を逸脱して暴走や不作為をしてしまうかもしれない。
それが一番の心配。