[OPINION] 沖縄市長選挙・選挙公約の考察

沖縄市長選挙、立候補予定者二人の政策の違いで大きなものは、基地問題のほかには公共投資への姿勢がある。その中で、泡瀬干潟埋め立てを伴う東部海浜開発事業は、島袋氏が現行の1区まで、桑江氏が那覇地裁で公金支出は違法として差し止められた2区までの工事を主張している。

東部海浜開発については既に議論はなされているが、桑江氏が打ち出した「公設民営サーキット場」「1万人規模の多目的アリーナ」「沖縄こどもの国を日本一に」については、さっぱり計画がわからないので評価できない。評価できないが、選挙でこの計画を支持するかしないか考えなくてはいけないので、彼が示さない計画の詳細を、他の事例を参考に分析してみた。

公設民営サーキット場の建設場所

公設民営のモーターサーキット場を建設し、自動車産業を誘致したいという計画らしい。その計画の妥当性や実現性はいかがなものだろうか。

日本には鈴鹿サーキットとツインリンクもてぎの二つのサーキット場がある。どちらもホンダが建設しており、現在は合併して「モビリティランド」が経営している。
このうち、建設が新しいツインリンクもてぎを参考にしたい。

ツインリンクもてぎは、栃木県の茂木町にある。正直言って、かなりの田舎にある。モーターサーキット場を作るには広大な土地が必要なので、街から離れた場所に作られている。サーキット部分の面積は220ha。
これを市内で作るとしたら、どんなイメージになるのかツインリンクもてぎを市内の地図に載せてみた。

市内でレース場が作れそうなくらい平坦な地形の土地を探してみたら、宮里、美原地区にあった。

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宮里サーキットは、残念ながら約2万人くらいの人を立ち退きさせないといけないが、この付近の地価は48万/m^2くらいなので、買い上げるとなると…1兆円超えてしまった。ここには作れない。立ち退かずに借地料を払うにしても、毎年数十億はかかるだろう。

もっといい場所が北にあった。基地や原野が多い白川付近である。

 

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かなり広い範囲を米軍から取り返さないといけないが、白川サーキットは路線価15万円くらいなので、3,300億円くらいで買うことができる。ツインリンクもてぎの総工費は数百億円らしいので、あわせても4,000億円くらいだろうか。
いや、4,000億円でもかかり過ぎだって考えると、海に乗り出すしかない。

埋めてて計画のある泡瀬干潟。

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泡瀬サーキットの場合、現在の1区のほか、2区まで埋め立てて、さらに拡張するか、あるいはサーキットをしょぼく、縮小すれば入りそうだ。
2区まで含めた事業計画では総工費は約1,000億円らしいので、サーキットの建設費も含めると1,500億円くらいで済みそうで、白川近辺に作るよりも半分以下である。

ところで、泡瀬地区の住民は、路線価5万くらいの巨大な空き地が隣に作られることになるのだが、地価下落はしたりしないか?
少なくとも、泡瀬の土地を売ろうとしている人は今の価格では売れなくなると思うけど。

サーキットの収入

泡瀬サーキットの建設費1,500億円を、運営する民間企業が、いくら沖縄市に払ってくれればいいだろう。
30年で償還するとしたら、毎年50億円、月にして4.2億円の賃貸料を払ってくれれば良さそうだ。

ホンダは鈴鹿、茂木と、二つのサーキットを抱えているので三つめのサーキットは要らないだろう。そうすると、他にサーキットがあったらうれしい車メーカーと言うと、トヨタ? ヤマハ?

メーカーがサーキットがあるからという理由で沖縄に工場を作るだろうか。もし自動車メーカーが沖縄に進出してくれれば経済的メリットはあるかもしれない。そんな会社が日本に、いや、世界のどこかにあったらの話だが。

1万人規模の多目的アリーナ

前のブログ記事にも書いたが、1万人規模の多目的アリーナと言われてもピンとこない市民が大多数だと思うので、既存の施設を参考にする。

1万人規模の多目的アリーナとしての施設で有名なのは日本武道館だ。武道館でも、まともに使うと収容人数は7,000人くらいなもので、ステージの後ろまで使った場合に1万人以上収容できる。そういう座席に座った観客は、ミュージシャンのコンサートならば、演者たちの背中やお尻を鑑賞することになる。それが好きな人もいるかもしれないが。

さて、県内の多目的アリーナとして有名なのが沖縄コンベンションセンターであるが、こちらの収容人数は5,000人とのことである。これを超える多目的アリーナを沖縄市で建設するのだ。沖縄コンベンションセンターの建設費は180億円くらいなので、単純計算で倍くらいだろうか。

桑江氏の計画では、コンベンションセンターを大きく超える多目的アリーナを建設するというのである。

青年エイサー会館

これは現市長の下で進められている計画。当然島袋氏はこの計画を引き継ぐものと考えられるが、桑江氏がこの計画に反対しているという話は聞こえてこない。

衰退しているコザの街、胡屋十字路地区に、12億円ほどかけて青年エイサー会館を建設するという。
概要は、エイサーの歴史や青年会の資料展示、ちょっとした観客席のある演舞場が設けられるらしい。

誰がどう使って、どんなに嬉しいのだ?これ。

沖縄市がエイサーの発祥地と言うわけではないのだが、エイサーが盛んな方であるのは間違いない。ただ、青年エイサー会館を建設する、しかも衰退してはいるが土地があまり空いていない胡屋十字路地区に建設するとはどういうことか。なぜ土地に余裕がある美里側ではないのか。そこならば駐車場も十分確保できるだろう。

この青年エイサー会館が胡屋に作られる理由を考えても、嫌な物しか思いつかない。
胡屋の街を復活させるのはもう無理だ。
しかし、そこに土地を持っている人たちは、なんとかしたい。街を復活ではなく、自分の資産を何とかしたい。
この土地に店を作ってもテナントは入らないだろうし、家賃収入も期待できない。マンションを建てても、美里側のように入居者は集まらないだろう。

そこでだ、沖縄市が土地を買うか、借りるかしてくれれば安心だ。固定資産税を取られるだけで、収入にはならない土地建物に、沖縄市がお金を出してくれるのだ。
みんな大好き、エイサーを看板にすれば文句も少ないだろう。

沖縄市は12億円をかけて新たな重い負担を市民に科すが、地主と建築業者だけは嬉しいのである。

沖縄こどもの国を日本一の動物園に

おそらく、日本で1,2を争う動物園は、上野動物園と旭山動物園だろう。両方とも、年間300万人くらいの入園者数がある。
面積を見てみると、上野動物園が14万m^2、旭山動物園が15万m^2となっている。

桑江氏が日本一にするという沖縄こどもの国(沖縄子供未来ゾーン)の面積は20万m^2と、上野、旭山の両園よりも大きく上回っている。入園者数は遊園地を設置した1990年の55万人をピークに減少したが、ワンダーミュージアム開館やゾウの公開によって持ち直し、現在は30~40万人の間を推移しているようだ。
長い間赤字経営が続き、市からの借り入れも多かったようだが、最近は利益があるとも聞く。

さて、その沖縄こどもの国の面積は20万m^2らしいが、実際には中央に大きな池があること、その池を中心にしてすり鉢状になっていることから、敷地の面積のうち大部分が水面と斜面と考えられる。実際に使える面積は、旭山動物園の半分程度にすぎない。
そんな沖縄こどもの国を、今の10倍もの入園者が訪れる日本一の動物園にすることは可能であろうか?

まず交通・アクセスの問題がある。旭山動物園は中心街から10km離れており、皆車で来るが、広い駐車場が確保されている。観光客が多いので、バスでの団体客も多い。
上野動物園の場合は、言うまでもなく、上野駅と隣接している。
しかし、沖縄こどもの国は車でしか来れないが、駐車場があまり広くない。入り組んだ市街地にあり、大量の車が来ると交通が大混乱する、という状況である。

物理的に、日本一の動物園にするのは、何か画期的な交通機関や斜面水面を活用した展示方法を発明しない限りは実現不可能だろう。
従業員も少なく、実は大勢のボランティアが営業を手伝っているらしい。

個人的には現状の沖縄こどもの国で十分だ。過剰投資して負債を増やすべきではないと思う。

無駄な巨大公共工事に依存する景気対策

これは、保守の桑江氏にかぎらないが、土木建設業が多い沖縄市にとっては、長年公共工事に頼って市内の経済対策としていたところがある。
工事さえ発注できればいいので、事業計画がメチャクチャなものになり、建設コストどころか維持管理費の赤字がどんどん累積しているコリンザのような存在もある。音市場も、誰もがわかっていたことだが、計画通りに進んでいるとは到底思えない。
東部海浜開発計画も、建設計画以外の経営部分の計画がメチャクチャだったから裁判で公金支出の合理性が無いとして支出差し止め判決となったわけだ。

これは革新市政になっても程度の差こそあれ、基本的には変わらない。

コリンザなどは革新市政の新川市長時代に作られたものだし、エイサー会館は中道・革新系の東門市長だ。

市長よりも酷いのが、市議だ。市議には直接的に建設業の支援で選挙を勝ってきた人が多く、そのような議員たちが建設業以外の大多数の市民の事を考えてくれている様子が感じられない。(もちろん、保守系議員にもまともな人はいる)
その結果、教育関連の事業費が少ない。

校舎がボロボロになっている学校が多く、耐震基準に適合しているか疑問である。大地震でもあれば、子供たちに校舎の倒壊や落下物で多数の被害が出るのではないかと思う。
残念な親たちは、自分の子供が学校に行っている間に大地震が起こることが無いようにと願うだけか、あるいはそんなリスクを考える事すらないのかもしれない。

教育に目を向けない沖縄市の政治家

公立学校が教育予算をかけないことで、子供の学力は親の教育投資に左右される。

差別的な意見に思われるかもしれないが、沖縄市には建設業従事者が多い。建設業の従事者は雇用の底辺の受け皿ともいわれるくらい、学力や技能を重要視せずに肉体労働だけを期待する雇用が多い。

そのような家庭の子供の場合、親が積極的に教育費を捻出することも少なく、そうしようという意志をもつ親も少ないため、公共の貧弱な教育しか受けられない子供たちは、勉強に遅れ、進学率も低くなりがちである。
その結果、親が建設業をしている家庭の子供は、大人になるとやはり建設業につくというパターンが多い。
事実、親子で土木作業員という家庭は少なくない。

これが、沖縄市に建設業従事者が多い所以ではないかと思う。

建設業は、選挙運動に使われやすい業種でもある。
親戚知人に建設業の人が居れば、ほぼ確実に保守系候補者への投票をお願いされる経験があるだろう。
今度の市長選挙でも、ほぼ確実に建設業の人たちが動員されると思う。彼らは将来ではなく、今得られる仕事があればいいと考えている人が多い。

巨大龍柱、誰が見るかわからない巨大ビジョン、どう座っていいかベンチなのかすらわからない爬竜船など、那覇市の一括交付金あたりを財源とする無駄使いは酷かったが、やっぱり沖縄市も酷いものだ。

信頼できる公約を!

普天間基地の県外移設を訴えるという公約について、県選出の自民党国会議員たちは公約を撤回した。それに同調するかのように自民党沖縄県連も「危険の除去。県外はこれからも訴え続ける」という言いわけをいっているが、ちっとも「県外移設」を国に要請することはなくなった。そして仲井眞知事の事実上の県内移転受け入れとも言われる辺野古の埋立申請認可。

保守、自民党の県民への公約の軽さが目立ったのがこの半年だ。
無謀で実現性の乏しい公約を大量に立ち上げて臨む場合、その公約の信頼性はどうであろうか?
公約自体が信頼性が無いものでしかない場合、有権者は信頼して票を投じることができるだろうか?
票が取れそうな公約を適当に主張してはいないか?
実は実現するつもりはないんじゃないのか?

沖縄市民が愚鈍でお人好し、何でも信用してしまうという場合には通用してしまうかもしれないが。
信用しちゃう人が少なくないようで、ちょっと怖いのが正直なところである。