[OPINION] 沖縄市長選挙・前哨戦考察

まだ公示前だが、沖縄市長選挙の中道革新・保守の一騎打ちが白熱しつつある。

中道・革新の、島袋氏は前副市長で行政経験を積んでいるが、現市政を継承するという以外には特に目立ったアピールが無い。選挙というのも初めての人。

一方、保守の桑江氏は元県会議員で、市長選挙になるために県議を辞職した。市会議員・県議会議員と選挙経験が豊富な氏は、島袋氏に対して自分の政策アピールが盛んだ。

その二人の政策について、選挙が始まる前に考察してみたい。

二つの沖縄市、コザと美里

沖縄市は、コザ市と美里村が対等合併して誕生した。合併したいコザ市と、消極的な美里村の間で合併協議会が開かれ、あくまで対等合併であるというコザ市側の説得に、美里側が同意して合併となった。

基地の街として、中の町社交街、ゲート通り、一番街、センター通り、銀天街と繁華街がもつ活気にあふれたコザと、サトウキビ畑の広がる農村の美里村の合併は、当初のもくろみ通りの対等とはいかなかった。
市政はコザ側に牛耳られ、公共投資はコザに偏り、美里側はないがしろにされていた。

合併後コザ側に建設されたものは、市民会館、市立図書館、コリンザ、音市場、ゲート通り・パークアベニューの改修などである。そして、衰退する商店街、一番街や銀天街、パークアベニューへのカンフル剤的な、効果のない投資は延々と続いている。
そして、対等合併の証として約束された市庁舎の美里への建設は、名市長と呼ぶ声もある桑江朝幸市長によって独断で反故にされ、現在の仲宗根町の丘の上に建てられた。
現在の市庁舎は不便な場所にあり、なかなか評判が悪い。美里を見下ろすようにそびえたつ庁舎のため、電波障害も発生した。

合併からやがて40年近くたとうとしているが、事情が変わった。ベトナム戦争の終結から冷戦も無くなり、さらに円高によって基地経済が極端に衰退してしまった。その結果、コザの街はかつての賑わいが嘘のように閑散としている。
一方の美里側は、隣のうるま市と合わさるかのように区画整理が成功し、美里近辺、泡瀬近辺とも人口が急増、経済的にも成長した。

沖縄市の公共投資はいまだにコザ側へ偏っているが、これはコザ側の市会議員が強く、市長もコザ側に多いため。
典型的な例として、近い時期に設立された安慶田中学校(コザ側)と宮里中学校(美里側)がある。
安慶田中学校は当時は珍しく、プールまで完備して開校したが、宮里中学校は低予算のため、校舎とグラウンドのみ、プールどころか体育館さえない状態で開校した。

このような差別的な公共投資に、美里側の住人は不満を持ち、名市長ともいわれた桑江市長は選挙で落選する羽目になる。
平成26年の選挙人登録者数は、103,032人のうち、コザ側41,826人、美里側61206人である。美里側は10年前よりも1万人ほど増え、コザ側はあまり増減はない。
美里側の公共投資を増やし、本当の対等合併を実現するためには、美里側の市民はちゃんと候補者のことを考えて選挙に臨んだ方が良いと思う。

なお、私はコザ側の住人だが。

革新不況というものの存在

立候補予定者の桑江朝千夫氏は前述の名市長、桑江朝幸氏の次男であるが、「沖縄市の失業率は14.5%であり、現市長の不作為が不況の原因である」と批判している。そのネガキャンを材料に島袋氏を攻撃しているポスターが「革新不況」ということらしい。ところがそれは事実ではない。

沖縄市は土木建設業が多い地域である。建設業は雇用の受け皿を担っている業種であるが、不況の影響をダイレクトに受けやすくもある。
建設業は銀行からの借り入れによって営業している部分が他の業種よりも大きいが、不況になると銀行の貸し渋りや貸し剥がしが横行する。そのため、不況になると従事者は失業しやすい。建設業の失業率は最近の最悪時には20%を超えることもあった。
そのような土木建設業を大きな支持基盤として活動していたのが故桑江市長であり、その息子さんでもある。そして、いわゆる箱物行政によって沖縄市政は失敗し、大きな負担を抱え、脆弱な経済基盤となっている現状がある。

そして現在、改善の兆しがみられる、と言う程度にすぎず、まだ不況の真っただ中である。

沖縄市の失業率と経済背景をグラフにしたものがある。

shitsugyoritu

クリックして拡大図でみれば一目瞭然。

現東門市長になる前の仲宗根市長時代には既に13.7%になっている。仲宗根市長は保守の市長だ。
経済的な背景を合わせてみると、バブル好景気のときに10%くらいの失業率が、バブル崩壊でいきなり14%に跳ね上がる。そして沖縄サミットで11.7%と一時的に改善したものの、その後は不況のうえに小泉改革で無駄な公共投資が削減、リーマンショックなどで13.7%、14.5%と上がっている。これは、たとえ保守市政が続いていたとしても同じだったはずだ。

逆に、この戦後最長ともいえる大不況で、建設業が多い沖縄市において失業率を下げる手段があっただろうか。

この事から、「革新不況」と無茶な批判を繰り出す桑江氏が信用できるかという話に帰着してしまう。

公共事業

泡瀬埋立事業は、裁判によって公金支出差止の判決が出ている。当初の土地利用計画は経済的合理性に欠けるため、公金支出は違法であるという判決なのだが、東門市政は第1区の工事のみに縮小し、計画を立て直すことで差し止め判決を回避したという建前で工事を続けている。

その計画でさえ、30年で累計67億円の赤字になる計算となっている。しかも、かなり甘い試算でだ。それを引き継ぐ島袋氏の姿勢にも疑問点は残るのだが、桑江氏はさらに、そもそもの差止判決を無視するかのように第2区の埋立までと主張している。裁判所命令はどこへ?

沖縄こどもの国については、島袋氏はキリンやゾウの繁殖施設整備と、現実的な程度の考えを示したのに対して、桑江氏は日本一の動物園にすると宣言している。
しかし、北海道の旭山動物園、東京の上野動物園を超える動物園にするのには並々ならぬ投資が必要不可欠だ。ほぼ夢物語のレベル。

桑江氏の公共工事計画は止まらない。公設民営のモーターレース場を建設するらしい。レース場が出来る事で恩恵を受ける市民がどれだけいるだろうか? 公設民営と言うとコリンザのような結果になるのではないか。
経営的に成功する見込みはほとんどないので、維持費が民営でも賄うことができず、市の負担になることは明らかだ。作ってしまったら後戻りできず、コリンザのように処理に困ってしまう。

1万人規模の多目的アリーナも建設するとのことだが、宜野湾には県のコンベンションセンターが最大で5千人程度の収容人数とのこと。1万人規模となると県内では当然最大で、国内でも有数の収容人数になる。
例えば日本武道館では舞台の裏にまで観客を入れて1万3千人で、普通に使う場合は9千人くらいになる。さいたまスーパーアリーナなどはこの2, 3倍はあるが、沖縄の人口で1万人規模のアリーナをどのように使うつもりだろうか。これも夢物語のように思えるし、実際に作っちゃうと後が大変なことになりそう。

「借金を怖がらずに公共投資をする」と宣言している桑江氏が、怖がらずに借金を重ねた先には何があるだろうか?

基地問題への姿勢

嘉手納基地の白川地区に、浦添のキャンプキンザーを移転する計画があるらしいが、基本的に島袋氏も桑江氏も反対の立場らしい。ただ、仲井眞県政と自民党政権との強いパイプを強調する桑江氏は、国が強行すれば抵抗はしないものとみられる。

普天間基地の辺野古への移転計画については、島袋氏は反対。一方の桑江氏は「沖縄市とは関係ないから争点としない」と避ける一方で、「危険性の除去が優先」とは主張している。

桑江氏は先の参議院選挙で島尻あい子議員が当選のとき、自身のWWWサイト「桑江朝千夫・ホームページ」(Web魚拓)でこう述べている。

争点がボヤケてしまったような選挙でありましたが、民主党の国民だましのマニフェスト違反、不実行
沖縄県民を愚弄するような普天間飛行場移設の逆戻り、県民不在の頭越しの日米合意等さまざまな民主党政権のブレや幼稚さに、国民県民がNO!と審判したのでしょう。

まさに、自民党沖縄県連は、県外移設を訴えて当選した人々でありながら辺野古容認に転じ、県民の意志不在の頭ごなしの国とアメリカとの合意だけを持って移転計画を進めている。
しかも、そのときの県連の責任ある立場にいた人は…?

総括

どうも島袋氏のアピールは見えてこない。桑江氏は積極的に政策をアピールしている。

あまりアピールが無いために評価しづらいのだが、当たり障りのない政策と言うのが島袋氏であろう。簡単に言えば、現市政をそのままでいくよと。それが良いことか悪いことか判断するのは難しい。

桑江氏は色々と案を出してはいるが、実現性が無いものが多い。もし実現したらしたで、後で大問題となるものも多い。基地問題に関連して争点を避けて逃げている面もある。これは市民からの支持を失うからという点と、県外移設のままでいく公明党沖縄支部の支援が受けられなくなるからと考えられる。

さて、27日は鹿児島でも国会議員の補欠選挙があり、そちらのほうは集団的自衛権を敢えて争点として自民党が勝ち、「集団的自衛権を国民が支持した」という道筋を打ち出す計画と見られている。

沖縄市長選挙は、どうなるのだろうか。どちらが勝っても、沖縄市民全体の事を第一に考えて、一部の人にだけ都合がいいような市政には向かわないで欲しいと切に願う。