東部海浜開発事業計画案検証

経済的合理性が無いという司法判断を受けた後、短期間で策定しなおされた新たな事業計画案をみてみる。
自然は保護して大切にすべき子々孫々に受け継ぐ大事な財産ではあるが、それを捨ててまで埋め立てるべきと考えられる画期的で素晴らしい事業計画ならば、受け入れざるを得ないだろう。
一見して、フォントの選び方や数字の使い方が、まるで中学生の自由研究レポートのようであるからといって、中身をチェックせずに判断してはいけない。

「東部海浜開発事業」

この計画を大ざっぱに言うと、すぐ近くにある沖縄県総合運動公園のコンセプト、面積、施設内容などとそっくりなスポーツコンベンションを中核として、人工ビーチと商業エリア、ホテル・別荘地を合わせて整備するという夢の事業だ。

県総は広さ60haだが、こちらの埋め立て面積はおよそ96haで県総の1.5倍ほどある。
そのうち、宅地や商業地を除くと63haほどになり、県総と広さは同じくらいになる。

大きな道路2本に挟まれた県総は年間130万人ほどの来園者しかないが、沖合に突如現れる形で埋め立てる、1本の細い道路でしか行けないこの東部海浜計画は327万人も呼べる計画らしい。

泡瀬にはマリーナがあるが、ここにもマリーナを整備するらしい。
こっちが成功しても、現在のマリーナが衰退しちゃ意味が無いので、きっと新しくマリーナを利用するお金持ちがたくさん来てくれる計画なのだろう。世界不況の中にあって好調な中国の富豪辺りが利用してくれるのだろうか。

広大なホテル・コンドミニアムエリアを挟むように北と南東に分断して配置された8.5haの商業地域は、どのように使われるのかは不明。年間300万人以上が訪れる事業だ、さぞかし人気店がそろうに違いない。

16.2haという、商業エリアの倍の面積があるホテルエリアだが、宜野湾でも難航しているホテル誘致に対し、どこの、なんていう会社が「参画検討」を示しているのかはわからないが、きっと宜野湾とは違い、「検討したけど買わない」と言い出したり、買った企業が何もしないまま倒産してしまい、また買い戻すことになったり、建設途中で倒産してしまうような会社ではない、安定して巨額の開発費を捻出できる今時珍しい企業なのだろう。

ホテルは300室、コンドミニアム150室、コテージ30戸という規模は、ホテルでは名護のカヌチャ・ベイ・リゾート並みで、コテージが30戸というのは東村にある「つつじエコパーク」の倍以上である。
リゾートホテル地として大人気の恩納村に建設された、きれいなサンセットが眺められるリゾートマンションがあるが、こちらは世界大不況というご時世に翻弄されて売れず、コンドミニアムとして期間契約の賃貸にされたが、その後契約は確保できただろうか。
北谷の美浜近くには、高級巨大リゾートマンションが建設され、盛んに売り出している。そんな大人気地の恩納村や北谷町でさえ苦労するコンドミニアムを、リゾート不人気地の泡瀬に150室も作るらしい。
こんな、一見無謀なリゾートホテル契約を検討する価値が十分あるという会社は、ものすごい画期的なアイディアを持っているに違いない。

周辺のホテルでは、沖縄市の市街地に古いホテルが数軒、ラブホ街近くにある東京第一ホテルくらいなものだから、きっとそのホテルらには余裕で勝てるんじゃないだろうか。
東京第一ホテルもせっかく誘致はしたものの、開業までがえらい苦労したらしい。噂では、市税の免除などの条件付きで誘致できたと聞いたことがある。

この東部海浜開発事業の経済効果は、きっとこれらの既存のホテルにトドメを刺して、失業者・減収・経済的沈下が発生する分を差っ引いた経済効果ということなんだろうと期待していいんでしょうか。
10年間で21億円の税収増らしいが、年間だと2億円くらい。1000億円投資する割には微々たる税収だが、こんな冒険をしてくれる企業を誘致するには、免税や減税でアメを用意しないと難しいだろうし、それだと法人税は期待できない。
創出される雇用者らの住民税に期待するのだろう。

沖縄市民が待ち望んでいるらしい(私は別に待ち望んだことはないので、おそらく私以外の市民は待ち望んでいるのであろう)人工ビーチは、長さ900メートルもある広大なもので、陸上部には広い緑地帯を設けると言う。
ビーチの一部は立ち入り禁止にし、自然生物の保護エリアにするらしい。人工ビーチですけど。

Cの形で両端を囲われた人工ビーチには、沖合から吸い上げられて運ばれてくる真っ白な砂が敷かれることだろう。
もともと海流が弱く、泥が貯まっている干潟のところだ。海水もあまり回らず、砂も流れ出ることがないだろう。
ただ、干潟の近くなので、海水の透明度は期待できない。

規模的には、西原の埋め立て地にある人工ビーチ、西原マリンパークと同じようなものになるだろう。
西原マリンパークは、広い砂浜でビーチバレーをよく開催していて人気だが、テーブル・ベンチは全部紐で囲ってあって座らせないようにされており、お金を払わないと利用できない。
雇用者が増え、経済効果が高い人工ビーチを作るくらいなので、沖縄市の人工ビーチもきっと同じようにすると思われる。

人工ビーチ周りの利用者数は24万人を見込んでいるらしいが、西原マリンパークは年間38万人ほどが利用するらしい。西原マリンパークは、付近には南部の主要な人気ビーチもあり、そこよりも手軽に行けるビーチとして人気がある、のかな…。
干潟で水質が海水浴には不適切と考えられて不人気なため、海水浴場の空白地帯であった泡瀬なら、周囲にあるライバルのビーチは、同じ中城湾のビーチとして不人気な中城モール裏のビーチくらいしかないので、本当に計画通り事が進むのなら24万人と言わず、50万人くらい見積もればいいのに、と思う。
地元では「泡瀬の海で泳ぐなんてアホか」という声があるから、海に面しているのに県総には大きなレジャープールがわざわざ作られているとまでは言わないでおこう。

ちなみに、埋め立てに賛成している人は、実は泡瀬の地元の人が多い。
意外に思うかもしれないが、泡瀬に土地を買って持っている人などは、その価値が上がって売れると期待しているらしい。
巨大な空き地が出現することで自分たちの土地の価値が下がる可能性や、事業が成功しなかったら財政再建団体に陥って市民サービスが大幅に削減される可能性は想像していないかもしれない。

沖縄市はこの事業で177億円を支出するらしい。
本当にホテル用地として買ってくれる企業がいれば52億円で売れる見込み、商業地の賃貸権利料6億の見込みを引くと、大成功しても119億円が沖縄市民の負担だ。

年間の収支見込みでは、施設運営費は2.3億円の支出になり、0.5億の施設使用料、1.3億の借地料、市民税、固定資産税 2.1億円が収入となっている。
年間1.6億円の財政的な利益になるという計算だ。まぁ、74年くらいで投資分が回収できるというわけだ。

だがね、これはあくまで夢物語。

「ホテル用地購入・開業を検討する価値がある」という会社の財政状態がどうなのか全く不明だし、買うかどうかの可能性も不明だ。ただでさえ沖縄の観光産業バブル崩壊が明らかになっているのに、土地購入施設建設で100億円以上の投資をする企業が存在するのか極めて怪しい。ホテルが無ければ商業地進出もないだろう。商業地も成功しなければ、雇用創出効果も低いし、市民税・固定資産税も見込めない。施設使用料5千万円は固い数字に思えるが、177億円の支出に加えて毎年1.8億円の赤字を累積していく可能性が高い。

この事業計画の心臓部、巨大ホテルリゾートをやってくれる企業の存在確認が、ただのアンケートで「検討する価値が十分」という回答を得ただけの根拠なのである。
10社にでもアンケートすれば、1社か2社くらいは担当者にいい顔するために「検討する価値あり」って言うもんだ。何の責任も発生しないのだから。

実質公債費比率の算出のための数字が出されていないので、計画通りで15.8、最大でも16.0というのがどういう計算なのかわからないが、最大は販売価格58億円が10%下がった場合らしいので、単純に5.8億で0.2とすると、全く売れなかった場合は177億円まるごと負担することとなり、本当の最大は18を軽く超えることになる。将来的に運営費がかかっていくことや、施設の補修維持費、また、他の市街地再開発での支出、コリンザ、音市場の負債増大を考えると、下手すれば沖縄市の実質公債費比率は20を超える可能性もある。

今回の事業計画案に経済的合理性が全くないことは、馬鹿でもわかること。
沖縄市長や国交省大臣がそれを理解できないはずはないので、失敗することをわかっていても事業を進める理由があるのだろう。

この東部海浜開発事業や、その他の無謀な公共事業がすすめられた場合、沖縄市は30年後くらいには財政再建団体へ向かってまっしぐらかもしれない。
その時になって困るのは、沖縄市から離れられない老人などの市民である。
30年後には自分もその老人の一人になっているはずなので、どうしてもこの無謀な事業はやって欲しくない。

4 Comments

  1. 進出してくれる企業が本当にいるのか疑わしい、こういう大博打を平気でできる神経が正直理解できない。
    おそらく、賛成派による選挙でのバックアップがあったのではないかなと憶測してしまいます。
    コリンザ、ミュージックタウン、とハードからソフトなんて謳っておきながら結局箱物しか考えられないのが悲しいかぎりです。
    しかし、反対意見だけでは正直現状打破は出来ない。
    必要なのは「どうすればよいか」「どうしたいのか」を提示する事だと思います。
    現案よりもっと魅力的な案を提示することを考えるのも重要だと思います。

  2. ホントかウソかわかりませんけど、なぜこんな無謀な計画に賛成する人がいるのか、
    聞いた範囲での話。

    泡瀬の地主が、自分の土地の価値が上がったり、あるいは今全く売れない状態なのが
    埋立開発がされることで活性化されて売れるようになるかもしれないと思ってる人、
    あるいは軍用地か再開発か何かの土地振り替えで埋立地をもらえる約束をとりつけて
    いるか、それを期待している人、そういう自分たちの利益になるからといって、
    別の理由をアレコレと付けて周囲の「別に得しない。逆に損する人」たちに宣伝して
    説得してるからという感じらしいです。

    とりあえず、この計画はごく限られた人の懐にチャリーンとお金が落ちるだけで、
    他の大多数の市民にとっては負の資産として重しになるだけなのは間違いないと
    思いますです。

  3. 初めまして、kobaさん。

    駐車料金は無料だと思います。たぶんですが。
    この手の事業で珍しく大成功を収めた北谷町美浜のケースで、大きな無料駐車場を
    置くことによって集客率をあげた例がありますので。

    ただ、沖縄市の商業地再開発事業では、コリンザ・音市場で買い物した人には
    1時間や2時間だけ駐車料金無料というような、失敗確実な方針を取る可能性も。

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